この記事では理学療法士になるために学校選びについて現役理学療法士の視点から解説します。一つでも参考になれば幸いです。
この記事を読むべき人
- 理学療法士を目指している・興味がある高校生
- 子供の進路をサポートしたいご家族の方
- 進路指導を行う学校の先生
高校での選択:理系?文系?どっちを選べばいい?
理学療法士を目指すにあたって、高校の文理選択に悩む方も多いと思います。
基本的には理系を選んでおくのが無難です。なぜなら、多くの大学で生物や化学など理系科目が入試科目に含まれているからです。
ただし、大学によっては文系でも受験可能な入試方式(例:英語+小論文など)もあります。
私が高校生の頃は担任の先生に「理学療法士の大学は受験に理系が必要だから理系を選択しろ」と言われましたが、最終的に受験したのは理系科目は使用しなくても受験できる大学でした。
そのため、志望校の受験科目を確認して判断する必要があります。
詳しくは、高校の進路指導や各大学のHPで最新の入試情報を必ず確認しましょう。
補足ですが、大学の授業で心臓や呼吸、バイオメカニクスについて学ぶため生物や物理を選択していると大学でもスムーズに学べるかもしれません。
学校選びの基準:倍率だけじゃない!卒後を見据えた視点が大切
学校選びの基準として、
- 家から通えるか
- 倍率が高くないか
- 建物がきれいか
- 国家試験の合格率
など高校生のうちはこのあたりが基準になると思いますし、とても重要なポイントだと思います。
しかし、実際に入学し理学療法士になるとそれ以外にも重要なことが多々あったと感じました。
- どんな研究分野に強いか、研究機器があるか
- 実習の回数や期間
- 卒業生の就職先
これらのことは後々の進路や学びの質に関わってくる重要なポイントです。学校選びの段階で研究分野とかはイメージしにくいですが、個人的には実習関連についてはオープンキャンパスなどで詳細に聞いてみてもいいかもしれません。
理学療法士の大学生活は、意外とハード!?
高校生としては、ここが一番知りたいと思いますので詳細に解説します。
理学療法士の養成校では、一般的な大学生よりもかなり忙しいです。
その理由として、
- 授業の多くが必修科目
- 筆記試験だけでなく実技試験もある
- 長期間の病院実習がある
- 4年生の大半は実習・就活・国家試験の勉強
が挙げられます。
1.授業の多くが必修科目
一般的な大学では、必修科目がそこまで多くないので単位をいくつか落としても他の科目で補填できることが多いと思います。
しかし、理学療法士は専門職となるため、授業のほとんどが必修科目となります。そのため、1つでも単位を落とすと留年に繋がります。
私が行っていた大学では、試験に落ちた場合は再試験が行われていましたが、それも落とすと留年が確定するため試験毎にプレッシャーが半端なくありました。
授業の内容としても、専門用語や理学療法に関係する知識など新しく覚える内容が多く、勉強の時間はかなり必要でした。
これは理学療法士だけでなく、看護師や薬剤師など医療専門職や違う業界の専門学校でも同様だと思います。
2.筆記試験だけでなく実技試験もある
一般的な大学では、試験の多くは筆記試験だと思いますが、理学療法士は患者さんにリハビリを行うため、ある手技や測定が実施できるかといった実技試験も試験内容としてあります。
上記でも述べましたが、落としたら留年確定のため実技試験のプレッシャーは筆記以上に半端なくありました。
3.長期間の病院実習がある
これも医療専門職ならではだと思いますが、長期間の病院実習がかなり大変です。一昔前と比べると実習もかなりやりやすくなっていますが、やはり慣れない環境で数週間過ごすというのは大変です。
しかし、実際の患者さんに対してリハビリを行うところを見学したりするため非常に勉強になりますし、実習の時に学んだことは働き始めたときにとても役立ちます。
私は、実習を通じて早く一人前の理学療法士になりたいという思いが強くなり、その後の国家試験の勉強も苦にならなかったです。
4.4年生の大半は実習・就活・国家試験勉強
私が高校生の頃は、大学4年生は就職も決まって遊び放題と思っていました。現実は、理学療法士を含む医療系専門職の多くは実習・就活・国試勉強で遊ぶ暇なく終わります。
理学療法士の就職活動はだいたい6月くらいから始まり、多くの人は9月以降の秋ごろに決まることが多く、一般の大学生と比べて遅いと思います。
また、就活と平行して国家試験の勉強、学校によっては卒論を行う必要があります。
私の大学は卒論が必須でしたが、最近は任意になっている学校も多いそうです。
卒論も人によってやりたいやりたくないは様々ですが、個人的にはやってよかったと思います。卒後の話になりますが、研究活動を行ったり症例報告を記載する際の文章の書き方や構成などとても役に立ちました。
大学選びの1つとして卒論の有無は確認しても良いかもしれません。
国家試験は例年2月の末に行われます。合格率は約9割なので試験の難易度としては易しいですが、年に1度しか受けれないため万が一不合格だった場合は、また来年受験となってしまいます。学校の試験と同様にプレッシャーが半端なかったのは今でも覚えています。
忙しいけれど、やりがいのある大学生活
ここまで読むと「大変そう…」と思うかもしれません。確かに普通の大学生のように自由な時間は少ないです。しかし、その分だけ仲間との一体感ややり遂げたときの達成感はとても大きいです。
卒業後も同じ業界で働いているため、学会に行けば大学の同期と思い出話に花を咲かせることもエモいと思います。
子供の進路をサポートしたいご家族の方へ
保護者の方からすると「本当にやっていけるのか?」「学費や生活面は大丈夫か?」と不安に思うのは当然だと思います。
確かに、理学療法士を目指す大学生活は一般的な大学と比べてハードです。しかし、その分だけ専門性が高く、将来の安定につながる資格であることも事実です。
ご家族ができるサポートとしては、以下のような点があります。
- 大学や専門学校の情報を一緒に調べてあげる
- オープンキャンパスに同行して実際の雰囲気を知る
- 勉強が大変な時期に精神的な支えになってあげる
特に実習や国家試験前はプレッシャーが大きく、学生本人が落ち込みやすい時期です。その時に「応援しているよ」「あなたなら大丈夫」という言葉が力になります。
進路指導を行う学校の先生へ
理学療法士を目指す高校生の多くは、文理選択や志望校選びの段階で悩んでいます。
先生方には、ぜひ「どの大学でどんな学び方ができるのか」「入試に必要な科目は何か」などの具体的な情報を伝えていただけると生徒の助けになります。
また、「理学療法士=病院で働く仕事」というイメージだけでなく、近年はスポーツ現場や介護施設、企業での健康管理など幅広いフィールドで活躍できることも伝えると、生徒のモチベーションが高まるはずです。
理学療法士を目指す方へ
理学療法士を目指す大学生活は、普通の大学生に比べると確かに忙しいです。
ですが、それだけにやりがいや達成感も大きく、仲間と支え合いながら成長できる環境です。
「人の役に立ちたい」「医療職に興味がある」と思うなら、大学生活の大変さは必ず乗り越えられます。
入学前は不安もあると思いますが、実習で患者さんと接した経験は、一生の財産になります。
まとめ
この記事では、理学療法士になるための学校選びや学生生活のリアルについて解説しました。
理学療法士を目指す道は、決して楽ではありません。
必修科目の多さや実技試験、長期間の実習、国家試験など、普通の大学生活とは一味違うハードさがあります。しかしその先には、人の生活を支え、社会に貢献できる大きなやりがいと、一生ものの国家資格が待っています。
高校生にとっては、文理選択や志望校選びが最初の関門です。
ご家族は精神的・経済的な支えを、先生方は正確な情報提供と進路指導を、それぞれの立場でサポートしていただけると、生徒の挑戦を力強く後押しできます。
理学療法士という仕事は、病院だけでなく、スポーツ・介護・企業など幅広いフィールドで活躍できる可能性を秘めています。
「大変さ」以上に「やりがい」がある職業ですので、進路に悩んでいる方はぜひ一歩踏み出してみてください。
この記事が、高校生・ご家族・先生方それぞれにとって、進路選びの参考になれば幸いです。
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