この記事ではリハビリ職の新入職者に向けて今のうちにやった方が良いこと、自分が新人の頃にやっていたことを解説します。あくまで個人の感想なので一つでも参考になれば幸いです。
この記事を読むべき人
- リハビリ職の新人
- 来年はリハビリ職になる学生さん
- 新人の教育に困っている方 など
リハビリ職として病院や施設に入職したけど何をしたらよいかわからない。
勉強しなきゃいけないけど何を勉強したらよいかわからない。
今後どんなキャリアを歩んでいくかわからない
こんな悩みや不安があると思います。
これから私自身が思う新人のうちにやっておいた方が良いことややっていたことについて簡単に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
はじめに:新人セラピストが最初にぶつかる壁とは?
リハビリ職として働き始めて間もない頃、多くの新人セラピストが感じるのは「どんなリハビリをしたらいいかわからない」という不安があるのではないでしょうか。
学生時代には評価や治療の技術を学んできたものの、実際の臨床現場では、教科書通りにはいかないことが多いです。
- 担当する患者さんにどう声をかけたらいいか戸惑う
- 問題点や治療プログラムをどのように立てたらよいかわからない
- 毎日のカルテ記載や書類業務に追われて、リハビリの準備が手薄になる
- 看護師や医療相談員などの他職種連携がうまくいかず、退院支援が滞る
- 技術的な未熟さがあり、患者さんへの申し訳なさで自己肯定感が下がる
こうした「臨床の壁」は、多くの新人が直面します。ですが、この時期にどんな意識で過ごすか、どんな行動を積み重ねるかが、その後の成長スピードに大きく影響するのも事実です。
私自身も新人のときは仕事には慣れてきたけど、先輩に言われたことしかできてないな、患者さんのリハビリを担当させて頂いているけど何をしたらいいかわからない、この仕事をあと40年もやるのかといった不安があったことを覚えています。
この記事では、私自身の経験も交えながら、新人のうちにやっておくべき行動を具体的に5つ紹介します。仕事を続けていくうえでPTとしての楽しさややるがいを感じて少しでも不安を解消し、自信をもって臨床に臨める一助となれば幸いです。
行動①:情報に振り回されない!まずは「優先順位」をつけて整理しよう
1年目は”やること”が多すぎる!だからこそ整理が必要
1年目は覚えなければいけないことが多いです。日々の業務や患者さんの情報、書類の作成方法、先輩や看護師、他部署の方の名前など新しく覚えることが数多くあります。
すべて完璧に覚えることができればよいですが、人間ですから人の名前を忘れてしまう事もありますし、メモをしても日々新しく覚えなければいけないこともたくさん出てきます。
臨床場面でも、患者さんがどんなことを大切にしているのかといったパーソナルな情報、どんな経過を追って入院してきているのかといった医学的な情報、歩行やADLでどんな問題点があるのかといった理学療法評価など様々な情報が出てきます。
これらの情報や覚えなければいけないことに優先順位をつけて整理することが重要です。
例えば、リハビリの総合実施計画書は入院から原則7日以内に作成しなければいけません。逆に言えば7日も作成する猶予期間があるため入院時は総合実施計画書の作成よりも先にしなければいけないことがあれば優先順位として低くなります。
このように、物事に優先順位をつけて情報を整理して日々業務を行っていくことが重要であると言えます。
1日のスケジュールを書き出し、業務を見える化しよう
リハビリの介入時間などは毎日メモをしたりすると思いますが、そのタイミングで今日中に行う必要があることを書き出し業務の見える化を行いましょう。
業務内容を見える化することでその日にやらなければいけないことか、後日でも間に合うか自分の中で整理できます。
見える化をした後は、退勤時や1日の終わりなどに書き出した業務リストを終わらせているかを確認しましょう。
また、1日だけでなく1週間単位で簡単なToDoリストを作成してやらなければいけないことを見える化するものおススメです。
今日だけで完結させない!明日以降を有効活用しよう
リハビリの書類作成や勉強会の資料作成など業務内容によっては1日で終わらせることが難しい場合もあります。その日だけで完結させずに期限を決めて完成させるスケジュールを立てましょう。
臨床場面では、明日以降の介入のための今日はしっかり評価を行い問題点を抽出する作業も必要です。
即時的な効果を出すことも重要ですが、患者さんが入院している方や高齢者の場合は即時的に改善が難しいときもあります。最終的に患者さんの主訴やADLの獲得につなげられるために、その日に行ったリハビリがどうだったか、メモをしたり振り返ったりしましょう。
情報は蓄積して次に生かせるように整理し活用することが重要です。1度経験すると似たような疾患や症状の方に応用しやすくなるため明日以降のために整理しましょう。
行動②:患者さんとも先輩とも「まずは会話」!コミュニケーションがすべて
リハビリは会話から始まる
新人の頃は話しかけていいのかすら迷うときがあります。
患者さんにどう話しかければいいか、どこまで踏み込んで聞いていいのか、話しかけたけど会話が続かない。
先輩に質問したいけど忙しそう、何を質問したらわからない、うまく説明できるか
こういった会話自体をハードルが高いと感じてしまう方も多いと思います。しかし、実際に臨床で働いてみるとこのハードルを越えないといけない場面が多々あり、「コミュニケーション=リハビリの土台」と実感します。
新人のうちは、リハビリの知識や技術に目が行きがちですが、コミュニケーションも同じくらい大事なスキルです。
理学療法士やリハビリ職は患者さんだけでなく先輩や他部署の看護師や相談員、患者さんの家族、外部のケアマネジャーなど様々な人と関わる機会が多いです。
コミュニケーションスキルが上達すると、自然といろんな方と話せるようになり、働きやすくなったり、退院支援が円滑に進んだり、ミスも減ってきます。つまりコミュニケーションを行う事で業務効率にも直結する武器になるのです。
”報・連・相”が成長の鍵
先輩への相談や看護師との情報共有は最初は緊張しますが、わからないことは早めに聞くことこそ臨床力を伸ばしてくれます。
私自身も新人の頃は「前も聞いたし何回も聞くのは申し訳ないな」と思い先輩に話しかけられないときもありました。しかしある先輩に、
「1回で覚えられるほうがすごいんだから何回聞いてもいいし、聞かずに間違えるよりも確認してもらった方がこっちも安心するよ」
と言われてから間違えて手間を増やすよりも聞いた方がいいんだと思い声をかけられるようになりました。
私自身も新人に指導するときは迷ったらまず聞いてほしいと伝えます。聞かれる側になって、聞きに来てくれる新人はちゃんと意思表示をできるので安心して仕事を任せられる、仕事を振れると感じるのでどんどん聞きに行きましょう。
また、新人のうちは臨床推論が浅く、短絡的になってしまったり、そもそも何が問題点かわからないことも多いです。理学療法では経験に基づく目標設定やリハビリも重要ですので、経験のある先輩がどういう臨床推論をしているのか、どういう思考過程を踏んでリハビリをしているのかを聞いてみるも良いと思います。
話を聞きに行くポイントとしては、
- 質問や報告は結論から伝える
- 忙しそうな時は「今、お時間大丈夫ですか?」とワンクッションいれる
- 何かを教わったら「ありがとうございます」を必ず伝える
- 教わった内容がどうであったか結果を報告する
こうした小さな心がけで、周囲との信頼関係がどんどん築かれていきます。
話すこと=安心感を与えるケア
リハビリでは技術も大切ですが、患者さんとのラポール形成も重要で「この人となら安心してリハビリができそう」、「私のことを一生懸命考えてくれている」と思ってもらう事が大切です。
新人のうちは、疾患や動作分析の知識に自信がなくても構いません。まずは患者さんに対して親身になり、雑談を一つするだけでも十分な信頼構築になります。
- 「今日はよく眠れましたか?」
- 「今日は暑くて30℃超えてるみたいですよー」
- 「家にいるときはどんなことをして過ごしていたんですか?」
こういった病気以外の会話も積極的に行ってみましょう。
「この人と話すのちょっと楽しいな」と感じてもらえればリハビリの雰囲気もポジティブなものになります。
行動③:学びは現場にある!日々の業務から”勉強癖”をつけよう
臨床こそ最大の教科書
理学療法士としての知識や技術は、学生時代にある程度学んできたかもしれません。しかし、実際に現場に出ると、「教科書通りにいかない症例」や「現場独特の対応」にたくさん出会います。
- カルテに書いてある“見慣れない医学用語”に出くわしたとき
- 担当した疾患について、どんな症状や経過をたどるのか疑問に思ったとき
- 先輩が行っているリハビリの内容が自分には思いつかないとき
こういった疑問を「そのままにしない」ことが、最大の学びになります。
調べる習慣が身につくと、「またこの疾患だ」「この症状、前も見たな」といった臨床経験の引き出しがどんどん増えていきます。
特に、先輩から得た知識やテクニックは“現場の知恵”そのもの。
教科書には載っていないような患者さんとの向き合い方、声のかけ方、治療手順などは、現場に身を置いている今だからこそ吸収できる財産です。
私自身も教科書や文献を参考にしながら患者さんのリハビリを行っていましたが、ADLの獲得に難渋することがありました。
そんなときある先輩にフィードバックをもらいながら一緒にリハビリを行っていくことでADLの獲得を達成できました。先輩から「教科書や文献も大切だけど、その患者さんが今どういう身体機能があるか自分で評価してみてそれに合うようにリハビリをしないといけないよ」と言われました。
教科書や文献ではその患者さんの治療法や評価法は乗っていないので、自分で評価して仮説を立て治療して振り返っていくことが必要です。これこそ現場で学ぶということです。
とにかく手を動かす
学ぶうえで大切なのは、「まずやってみること」です。
- 頭の中で考えてばかりで、結局動けない
- 完璧に理解してから動こうとしてしまう
…そんな思考に陥ることもあるかもしれませんが、実際には行動しながら学ぶ方がずっと効果的です。
- わからない用語などは手書きでノートにまとめる
- 患者さんの経過を整理してまとめる
- 勉強した内容をパワーポイントにまとめる
こういった“手を動かす学び”を続けていると、ただ見聞きしただけの情報よりも、記憶に残りやすくなります。
「考えてばかりで1時間が終わった」よりも、「30分でも手を動かして1つ理解が深まった」方が、実は大きな成長です。
勉強は、「やる気がある時にやるもの」ではなく、「習慣にしていくもの」です。
まずは、“少しだけ手を動かしてみる”ことから始めましょう。
個人的には、パワーポイントにまとめることをおススメします。
パワーポイントにまとめることでインプットだけでなく、文字に起こして整理しながらアウトプットにもなりますし、人に説明するようにあとめることで自分が今どこがわからないかが明確になるからです。
アウトプットはインプットよりも記憶の定着に有効ですし、一度まとめると忘れたときに振り返りやすいです。
行動④:今しか考えられない未来がある。「キャリアの地図」を描いてみよう
3年後の自分を思い描く
理学療法士として働き始めたばかりで、「この仕事をあと40年続けられるのかな…」と不安になること、ありませんか?
でも、未来は突然やってくるものではなく、“今”の積み重ねが未来をつくるのだと思います。
たとえば、1年目で「患者さんと会話がうまくできるようになる」ことを目標にする。
2年目で「疾患やリスク管理の知識を深める」ことを意識する。
3年目には「後輩にアドバイスができるようになる」――そんな小さなステップで構いません。
大切なのは、自分がどんな理学療法士になりたいかです。
将来、訪問リハビリをやってみたい、スポーツ分野に進みたい、臨床家としてスキルを磨きたい、教育にも関わってみたい…
そんな漠然とした思いでもいいので、頭の片隅に置いておくと、日々の学びや選択の軸になります。
キャリアについて想像がしにくい場合は、職場の先輩や上司を手本にするのも一つの手です。
未来をより良いものにするために今できることを精一杯行いましょう。
やりたいことが変わってもいい
最初から「自分はこれがやりたい!」と決まっている人は少数派です。
実際には、経験を積んでいく中で“興味の方向”が変わっていくのが自然な姿です。
脳卒中のリハに興味があったけれど、嚥下や在宅分野にやりがいを感じるようになることもあるし、
運動療法よりも環境調整や福祉用具の選定にやりがいを見出す人もいます。
そのとき自分が興味のある分野について勉強しておくと裾野が広がります。
「やりたいことが変わった=迷い」ではなく、「視野が広がった」証拠です。
そのときどきで心が動くものに素直に向き合うことで、自分にとっての“本当のやりがい”に出会えるかもしれません。
だからこそ、未来を描くときは「方向性を決める」よりも、「選択肢を増やしておく」意識が大切です。
今いる職場こそ、武器になる
どんな職場であっても、そこでしか学べないことが必ずあります。
たとえば、急性期ならリスク管理の力、回復期なら動作分析とリハビリ介入の深さ、生活期なら環境調整や多職種連携の広さ。
どの病期も、それぞれにしかない“視点”や“考え方”があります。
私自身も、回復期で長下肢装具を用いた歩行訓練に慣れていた経験が、その後急性期で装具未経験のスタッフに指導する際に活きました。
逆に急性期でのリスク管理やバイタルチェックの意識が、回復期に戻ったときにも非常に役立ちました。
つまり、どんな経験も、のちに必ず“引き出し”になります。
今の職場で経験できることをしっかりと吸収しておくことが、未来のあなたにとって何よりの強みになるのです。
行動⑤:心と体の健康が第一!「セルフケア」を忘れない
PTも”健康第一”
理学療法士という職業は、「人の健康を支える仕事」です。
だからこそ忘れてはいけないのが、自分自身の健康です。
新人のうちは、「早く一人前になりたい」「迷惑をかけたくない」といった気持ちから、無理をしてしまう人も少なくありません。
食事をおろそかにしたり、寝る間も惜しんで勉強したり、休日も仕事のことばかり考えてしまったり…
ですが、心と体に余裕がなければ、良いリハビリは提供できません。
患者さんと関わるということは、身体だけでなく“気持ち”も受け取る仕事です。
知らず知らずのうちに、心が疲れてしまうこともあります。
- 疲れが取れないまま翌日を迎えていませんか?
- 眠れないまま仕事に行っていませんか?
- 我慢し続けて、感情が押しつぶされそうになっていませんか?
こうした小さな“異変”に気づき、自分をケアしてあげることも、プロフェッショナルの大事なスキルです。
モチベーションは”休む力”で保たれる
仕事を長く続けていくうえで大切なのは、「頑張り続ける力」ではなく、“うまく休む力”です。
- 美味しいものを食べる
- 友達とカフェで語り合う
- 散歩したり、ストレッチや運動で体を動かす
- 旅行をしてリフレッシュする
- 一日中なにも予定を入れずにゴロゴロする
どんな休み方でも構いません。“自分のエネルギーを回復する方法”をいくつか持っておくことが大切です。
また、気持ちが沈んでしまったときは、無理に前向きになる必要はありません。
そんなときは、「今日1日、無事に終えた自分をほめてあげる」だけでも十分です。
モチベーションは「やる気」で保つものではなく、心と体に余白を作っておくことで保たれるものです。
新人の頃は、何もかも頑張ろうとする気持ちが強くなりがちです。
でも、休むことは「サボり」ではありません。明日も頑張れるようにするための、立派な準備なのです。
まとめ:小さな行動が未来をつくる
今回の記事では新人のリハビリ職として今のうちにやっておきたい5つの行動について解説しました。
1.情報に振り回されない!まずは「優先順位」をつけて整理しよう
→見える化と計画で、業務を効率的に進める力をつけよう
2.患者さんとも先輩とも「まずは会話」!コミュニケーションがすべて
→ 話すことは安心感の提供。報・連・相が信頼関係の第一歩。
3.学びは現場にある!日々の業務から“勉強癖”をつけよう
→ 疑問はその場で解決。「とにかく手を動かす」ことが成長につながる。
4.今しか考えられない未来がある。「キャリアの地図」を描いてみよう
→ やりたいことは変わっていい。今の職場の強みを未来の自分の武器に。
5.心と体の健康が第一!セルフケアを忘れない
→ 頑張る力より、休む力。モチベーションは“余白”で保たれる
新人時代は、誰もが悩み、戸惑い、不安になるものです。
でも、その時期に何を意識して、どう行動するかで、数年後の自分はまったく違った姿になっています。
完璧じゃなくてもいい。正解がわからなくてもいい。
大切なのは、「行動すること」「続けること」です。
この記事の中で、ひとつでも「やってみようかな」と思えることや参考になればうれしいです。
これからも理学療法士についてや身体に関することを解説していきますので今後もご覧頂けると幸いです。
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